23℃。
周囲の室温とほとんど同じでした。
でも、冷蔵庫の中は数℃しかありません。
中と外では大きな温度差があるのに、外側は冷たくない。
不思議だと思いませんか?
いや、考えてみれば当たり前なんです。
冷蔵庫は、その大きな温度差を保てるように設計されているのですから。
私は時々、冷蔵庫を開発してきた技術者たちのことを考えます。
どうすれば冷たさを逃がさないのか。
どうすれば余計な熱を入れないのか。
どうすれば湿気が入り込まず、結露を防げるのか。
きっと何度も考え、実験して、改良してきたんでしょうね。
そんなことを考えると、私も少しうれしくなるんです。
実は、私も住宅で似たようなことを考えてきたからです。
まだ会社勤めをしていた頃の話です。
ある住宅で、巾木のあたりから水が出てきました。
雨も降っていない。
近くに水道管もない。
なのに、水が出てくる。
おかしいと思って壁を開けると、断熱材と防湿フィルムの間に水がたまり、カビが発生していました。
あの光景は今でも忘れません。
当時は、なぜこんなことが起きるのか、十分に理解できませんでした。
でも、一つだけ思ったんです。
こんな家をつくってはいけない。
そこから私の断熱や気密、結露に対する考え方が少しずつ変わっていきました。
最近、高断熱住宅が増えてきました。
断熱性能を高めれば、少ないエアコンで家全体を快適にできる。
そう考える方も増えています。
でも、本当にそうでしょうか?
実際、私のところには夏の空調で困っている方から相談が来ます。
断熱性能は高い。
エアコンもついている。
それなのに、夏は暑い。
寝室が暑くて眠れない。
冷房の風が当たるところは寒いのに、離れたところは暑い。
サーキュレーターを使っても、なかなか改善しない。
住宅の専門家から相談を受けることもあります。
私はこうした相談を受けるたびに思うんです。
断熱性能を高めることと、快適な家をつくることは、同じではない。
断熱は大切です。
でも、断熱材が自分で家を冷やしてくれるわけではありません。
家全体をどう冷やし、どう快適な状態に保つのか。
その空調計画がなければ、高断熱の性能を十分に生かせないのです。
私は長年、家全体を23℃前後の快適な環境に整えることに取り組んできました。
すると、こんなことを言われます。
「そんなに冷やして大丈夫なんですか?」
「内部結露するんじゃないですか?」
「高断熱住宅を冷やしすぎるのは危険ですよ」
もちろん、内部結露は怖いものです。
私自身、壁の中が水浸しになった住宅を見ています。
だからこそ、結露の危険を軽く考えたことはありません。
でも、そこで疑問に思ったんです。
なぜ、冷やしてはいけないという結論になるのだろう。
冷蔵庫は、室内が23℃でも、内部を数℃に保っています。
トリプルガラスだって、室内側と屋外側で大きな温度差があります。
それでも、適切な構造と気密・防湿によって結露を抑えています。
住宅でも、結露を防ぎながら室内を快適にする方法を考えられるはずです。
ただし、冷蔵庫と住宅では構造が異なります。温度差があっても必ず結露するわけではありませんが、どんな壁でも安全に冷やせるという意味ではありません。
だから私は、実際に確かめることにしました。
もう一つ、よく言われることがあります。
「23℃にしているんですか?」
「それでは省エネにならないでしょう」
「26℃や27℃の方が電気代は安いですよ」
確かに、同じ家で同じ条件なら、冷房の設定温度を高くするほど、一般的には冷房負荷を抑えやすくなります。
でも、私は少し違う考え方をしています。
エアコンの設定温度だけを見て、省エネかどうかを判断していいのでしょうか?
例えば、室温が26℃でも、壁や天井に熱がたまり、暑く感じる家があります。
反対に、室温が23℃前後で、壁や床、天井まで穏やかな温度に整っている家もあります。
同じ温度計の数字だけでは、快適さは分かりません。
そして、電気代も設定温度だけでは決まりません。
建物の断熱性能、日射、湿度、空調の配置、運転方法。
それらがすべて関係します。
私が長年研究してきたのは、少ないエネルギーで、家全体の快適な状態をつくり、それを維持する方法です。
そのためには、単に設定温度を下げて、エアコンを力いっぱい運転すればいいわけではありません。
建物に熱をため込まないこと。
空気だけでなく、壁や床、天井の温度も考えること。
そして、自然の温度変化をどう利用するか。
その積み重ねが大切なのです。
私の家づくりでは、実際の電力使用量も確認しながら、快適性と省エネの両立を追求してきました。
もちろん、どんな住宅でも23℃にすれば省エネになる、という意味ではありません。
でも、私はこう思っています。
「27℃だから省エネ。23℃だから贅沢。」
そんな単純な物差しだけで、家の快適性を決めてほしくないのです。
大切なのは、何℃に設定したかではなく、その快適さをどれだけのエネルギーで実現しているか。
私は、そこにこだわり続けています。
私は長年、さまざまな断熱材や施工方法について考え、現場でも確認を繰り返してきました。
その中で、今の自分の家づくりに最も合っていると考えているのが、硬質ウレタンを使ったジョイコスパネルです。
断熱材の厚さだけではありません。
材料の性質、パネルの継ぎ目、気密処理、換気との関係、冷房したときの状態。
全部つながっています。
私の実験や施工経験では、適切に施工したジョイコスパネルの断熱層で、内部結露を確認していません。
一方で、わずかな隙間から湿った空気が入り込むと、局所的に結露することも経験しています。
だからこそ、施工をおろそかにはできないのです。
グラスウールにも優れた施工方法はあります。
ただ、私が求める空調と結露対策を、自分の技術で確実に実現していくうえでは、ジョイコスパネルの方が扱いやすいと判断しています。
使い慣れているから選んでいるのではありません。実際に確かめて、納得しているから使っているんです。
私は研究者ではありません。
難しい計算ばかりしているわけでもありません。
でも、現場で起きた現象を見て、なぜそうなったのかを考えることは、ずっと続けてきました。
冷蔵庫を見て考える。
窓ガラスを見て考える。
車の結露を見て考える。
実際に温度を測り、試してみる。
失敗したら、また考える。
そうして少しずつ、自分なりの答えを積み重ねてきました。
誰かが開発した技術にも、研究成果にも価値はあります。
でも、その方法がすべての家に当てはまるとは限りません。
だから私は、最後は自分の目で確かめたいのです。
私は、家を単に暖かくしたいわけでも、冷たくしたいわけでもありません。
一年を通して、家族が穏やかに暮らせる温度と湿度をつくりたいのです。
暑いから強い風を当てる。
寒いから暖房を増やす。
そうする前に、もっと根本的な方法がないかと考える。
もちろん、どんな住宅でも同じ運転ができるわけではありません。
壁の構造や施工状態によって、結露のリスクも変わります。
だからこそ、家をつくる段階から考える必要があるのです。
断熱は、性能の数字を競うためにあるんじゃない。
そこに暮らす人が、365日「ああ、快適だな」と感じるためにある。
これが、私の考える「春の家」です。
私が長年考えてきた、断熱、気密、換気、空調、そして家族の快適さ。
どうしてエアコン1台で家全体を快適にできるのか。
失敗した経験や、そこから学んだことも含めて、一冊の本にまとめました。
書籍『呼吸する家』です。
家づくりをこれから考える方にも、すでに建てた家の暑さや寒さに悩んでいる方にも、ぜひ読んでいただきたい一冊です。
きっと今までとは違った家づくりの見方が見つかると思います。
面白い本になったと思っていますので、ぜひ手に取って読んでみてください!
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