以前、加藤建築で家を建ててくださったお父さんが、私の施工中の現場に遊びに来てくれたんです。
このお父さんとは、忘れられない思い出があります。
家づくりを楽しみにしていた矢先に、胃がんが見つかり、胃を切除することになった方です。
そして、そのお父さんのために、長男さんが大きな決断をして建ててくれた家でした。
お父さんは、胃を切除してからもう8年になると話してくれました。
本当に元気でした。
元気で、ピンピンしているんです。
「お医者さんもびっくりしているんだよ」
そんな話までしてくれました。
さらに、
「黒い髪の毛が生えてきたんだよ!」
なんて、うれしそうに話してくれるんです。
いやあ、うれしかったですね。
あの頃のお父さんを知っている私には、奇跡のような再会でした。
私は、お父さんが以前暮らしていた家のことを、今でも覚えています。
目やにがひどく、目がくっついたようになって、ほとんど開けられないこともありました。
鼻も詰まっていて、鼻呼吸が難しい状態でした。
私自身、以前の家で打ち合わせをすると、頭が痛くなって本調子が出ないことがあったんです。
それが、新しい家で暮らすようになってから、お父さんに変化がありました。
あれほど悩んでいた目やにの問題がなくなったんです。
そして、
鼻からも普通に呼吸できるようになった。
これって、すごいことだと思いませんか。
目を普通に開けられる。
鼻から自然に息ができる。
健康な人には当たり前のことかもしれません。
でも、それが当たり前にできなかった人にとっては、どれだけありがたいことでしょう。
私は医者ではありませんから、その変化の原因を医学的に説明できるわけではありません。
でも、以前のお父さんを実際に見てきた私には、忘れられない変化なんです。
そして何より、お父さん自身が新しい家での暮らしを、本当に喜んでくれている。
そのことがうれしいんです。
ここで、皆さんに少し聞いてみたいことがあります。
「健康な家」って、何なんでしょうか。
断熱性能が高い家?
暖房設備が立派な家?
私は、それだけではないと思っています。
例えば、冬の寒い日。
暖かい部屋から、冷え切った脱衣場へ行く。
服を脱ぐと、ブルブル震えるほど寒い。
そして今度は、熱いお風呂に入る。
「あっちぇ! あっちぇ!」
さっきまで寒さに耐えていた体が、今度は熱さに対応しなければならない。
人間の体は大忙しです。
寒いときには、体の熱を逃がさないよう血管が収縮する。
熱いお風呂に入れば、血管が広がり、血圧が変動することもあります。
その急激な変化が、時には命に関わる入浴事故につながることもあるんです。
じゃあ、どうしたらいいのか。
私は、建築屋として考えました。
だったら、最初から脱衣場を寒くしなければいいじゃないか。
浴室も暖かくしておけばいい。
トイレだって寒くしなければいい。
冬だからといって、家の中でまで寒さと戦う必要があるんでしょうか。
私は、そんな家をつくりたいとは思わないんです。
夏の夜も同じです。
皆さん、暑くて眠れない経験はありませんか。
首のくぼみに汗がたまる。
背中はびっしょり。
布団は蒸れる。
何度も目が覚める。
ようやく朝になったと思ったら、
「ああ、疲れた。寝た気がしない……」
そんな経験、ありますよね。
私は思うんです。
寝ているつもりでも、体は一晩中、暑さと戦っているんじゃないか。
暑ければ、人間は汗をかきます。
血管を広げて、体から熱を逃がそうとします。
本当はゆっくり休みたい時間なのに、体は懸命に体温を調節している。
まるで寝ながらマラソンをしているような気分ですよね(笑)。
もちろん、実際にマラソンと同じ運動をしているわけではありません。
でも、暑さで眠りが妨げられれば、十分に休めなくなることがあります。
だからといって、エアコンの冷たい風を直接体に当てながら眠る。
今度は寒くなって、布団をかぶる。
風が止まるとまた暑い。
私は、ずっと疑問に思っていました。
どうして寝室でまで、人間が頑張らなければいけないんだろう。
私は、よくこんな説明をします。
「あなたが暑いんじゃない。あなたの周りが暑いから、あなたが暑いんですよ」
例えば、夏の寝室。
屋根裏には熱がこもり、天井が熱を持っている。
壁も暖まっている。
そんな環境では、室内の空気だけを冷やしても、天井や壁から熱を受け続けることがあります。
だから私は、冷たい風を人に当てることより、建物全体の熱環境を整えることを大切にしてきました。
壁も床も天井も、できるだけ快適な温度に整える。
湿度も整える。
家の中に大きな温度差をつくらない。
人間が暑さや寒さに合わせるんじゃない。家の方を人間に合わせるんです。
そうすれば、冬にトイレへ行っても寒くない。
夏のトイレも暑くない。
エアコンのない脱衣場や浴室も快適にできる。
夜も、冷たい風に直接当たらずに、気持ちよく眠れる。
私は、そんな家を研究してきました。
人間には、自律神経があります。
活動や緊張に関わる交感神経。
休息やリラックスに関わる副交感神経。
もちろん、どちらも人間にとって大切な働きです。
ただ私は、家にいる時間くらいは、暑さや寒さによる余計な負担をできるだけ減らしたいと思っています。
一日働いて、疲れて帰ってくる。
家に帰れば、暑くも寒くもない。
ゆっくり食事をして、お風呂に入る。
そして、ぐっすり眠る。
翌朝、気持ちよく目が覚めて、また新しい一日が始まる。
家は、ただ住むための箱じゃない。人が休み、明日の元気を取り戻す場所なんです。
私は、そう考えています。
だから、家の快適さにこだわってきました。
ただ23℃の室温をつくりたいわけではありません。
そこに暮らす人が、どんな毎日を過ごせるのか。
お父さんの話に戻ります。
あの日、私に家づくりを任せてくれた長男さん。
周囲から反対されても、諦めずに家を建てる決断をしてくれました。
そのときの願いは、とても切実なものでした。
「親父に健康になってほしい」
「加藤さん、健康にしてください」
あの言葉を聞いたとき、私は電気が走るような衝撃を受けました。
この人はすごいな。
自分のお父さんのために、ここまで考えて家を建てるんだ。
私は、その気持ちに何とか応えたかった。
だから、魂を込めて家をつくりました。
そして8年後。
お父さんは、こんな言葉を私にかけてくれたんです。
「俺が生きることで、加藤さんの家がすごいことを証明するんだ」
いやあ……。
こんなことを言ってもらえる建築屋が、どれほどいるでしょうか。
私は、その言葉が本当にうれしかった。
もちろん、お父さんの胃がんを私の家が治したわけではありません。
でも、お父さんはご自身が経験した変化や、今の暮らしの喜びを、こうして私に伝えてくれるんです。
お父さんの気持ちが、何よりありがたい。
私が家づくりに込めてきた真心が、少しでも届いていたのなら、こんなに幸せなことはありません。
実は、加藤建築には立派なショールームがありません。
その代わり、私は家づくりを検討している方に、実際に住んでいるお客様の家を見学してもらっています。
お父さんの家にも、これまでたくさんのお客様がお邪魔しました。
私は、そこで一生懸命営業する必要がないんです。
なぜかというと、お父さんが自分の言葉で話してくれるから。
「本当にいい家なんだよ」
「この家に住んで元気になったんだよ」
そして、自分が経験してきたことを、笑顔で話してくれるんです。
家を建てようとしている人には、不安があります。
本当にエアコン1台で大丈夫なのか。
冬は寒くないのか。
夏は暑くならないのか。
大きなお金を使って、本当に後悔しないのか。
そりゃあ、不安になりますよね。
でも、お父さんの話を聞くと、皆さんの表情が変わるんです。
勇気をもらって帰られる方もたくさんいます。
私が何時間も説明するより、お父さんの笑顔と実際の体験談の方が、ずっと伝わることがあります。
本当にその家を気に入って暮らしている人の言葉には、かなわないんです。
最初は「エアコン1台なんて嘘だろう」と疑っていたお父さん。
そのお父さんが、今では誰よりも加藤建築を応援してくれている。
お父さんは、最近の私の現場にも来てくれます。
今の家づくりを見ると、驚いてくれるんです。
「すごいなあ!」
「また進化したんだね!」
そして、
「うちもそうしてもらえばよかったなあ」
なんて言うんですよ(笑)。
いやいや、お父さん。
あの頃は、あの頃で、私も精いっぱいだったんです。
でも、私は研究をやめていません。
どうしたら、もっと快適になるだろう。
どうしたら、もっと少ないエネルギーで暮らせるだろう。
どうしたら、体が余計な暑さや寒さと戦わずに済むだろう。
そんなことを、今でもずっと考えています。
家が完成したら終わり、ではありません。
10年後も、20年後も、もっといい家をつくり続けたい。
そして昔のお客様が、新しい家を見て、
「また進化したんだね!」
と言ってくれる。
それが、私の大きな励みなんです。
私は、家づくりに人生をかけてきました。
性能の数字を競いたいわけじゃありません。
建築棟数を自慢したいわけでもありません。
まして、大きな広告を出して、有名になりたいわけでもありません。
私がつくりたいのは、人が本当に快適に暮らせる家です。
夏も冬も、家中が快適。
トイレも、お風呂も、寝室も。
365日、暑さや寒さを我慢しなくていい。
そして夜はぐっすり眠って、翌朝、また新しい一日が始まる。
そんな暮らしを、もっと多くの人に届けたいんです。
快適 → 健康 → 省エネ。
私がずっと大切にしてきた順番です。
快適な環境が、健康的な毎日を支える。
そして、その環境を少ないエネルギーで実現する。
それが私の目指す家づくりです。
最初にリフォームフェアで出会ったとき、お父さんは私の話を疑っていましたね(笑)。
冬の体感会で驚き、夏の体感会でも驚いて。
「俺、こんな家に住みたかったんだ!」
と喜んでくれた。
それから病気が見つかり、家づくりの途中で入院することになりました。
あのとき、家ができていく姿を見せてあげたくて、YouTubeを始めたんです。
その動画が、今では何万人もの人に見られるようになりました。
そして8年後。
お父さんが元気な姿で、また私の現場に来てくれた。
今では、これから家を建てるお客様にまで、勇気を与えてくれている。
こんなにありがたいことはありません。
お父さん、本当にありがとうございます。
長男さんにも、改めて感謝したいです。
あのとき、周囲の反対を乗り越えて、私を信じて家づくりを任せてくれて、本当にありがとうございました。
私は、あのとき預かった願いを忘れていません。
これからも、一棟一棟、魂を込めて家をつくります。
また新しい現場を見に来てください。
きっとまた、
「加藤さん、また進化したんだね!」
と言ってもらえるように頑張ります。
家は、人のためにつくるものだから。
加藤建築 加藤正勝
加藤建築では、実際に暮らしているお客様のお話を聞いていただける機会を大切にしています。
「エアコン1台で、本当に家中快適なの?」
「夏も冬も、どんな暮らしができるの?」
そんな疑問をお持ちの方は、ぜひご相談ください。
実際に暮らしている方のご都合を確認したうえで、見学をご案内できる場合があります。
また、私がなぜ快適な住環境と人間の健康、自律神経の関係を大切に考えてきたのか。
その思いや家づくりの考え方については、著書『呼吸する家』でもお伝えしています。
365日、春のような快適さが続く家。