快適研究室13話 家は10年後、20年後を見てつくった方がいい

僕はいつも、家づくりのアドバイスでこう言っています。

家は、今だけ見てつくるんじゃない。
10年後、20年後を想定してつくった方がいい。

でも、これがなかなか伝わらないんです。

「先を考えて家をつくりましょう」と言っても、
10年後とか20年後って、どうしても遠い話に聞こえるんですよね。

だから僕は、最近こう言うようにしています。

10年後や20年後を考えてごらん、ではなくて、
10年前や20年前を思い出してごらん。

そうすると、だいぶ変わったなってわかるはずです。

10年前と今では、世の中の空気も違う。
20年前なら、なおさらです。
物価も変わったし、暮らしも変わったし、エネルギーの値段もずいぶん変わりました。

たとえば灯油です。
昔は35円くらいだった。
それが今では130円です。
これだけ見ても、時代が変わったことは十分わかると思います。

つまり、今の当たり前は、10年後には当たり前じゃないかもしれない。
でも逆に言うと、10年前の当たり前も、今ではもう当たり前じゃないんです。

だから家づくりも、今の感覚だけで決めちゃいけないと思っています。

僕がつくりたいのは、変化に強い家です

大地震も起こるかもしれない。
大きな災害も起こるかもしれない。
世界のどこかで戦争が起きて、燃料や石油の値段が大きく上がるかもしれない。

だから僕は、家をつくる時に、
その場だけ良く見える家とか、
今だけ都合のいい家とか、
流行りに乗ってるだけの家をあまり信用していません。

本当に考えなきゃいけないのは、
世の中が変わっても、なるべく影響を受けにくい暮らしができるかどうか
だと思っています。

地震も災害も戦争も、家一軒で止めることはできません。
でも、そういう大きな変化が起きた時に、暮らしへの影響を小さくする家 はつくれると思っています。

電気代が上がっても、家計へのダメージが小さい。
燃料が高くなっても、暮らしが崩れにくい。
外が暑くても寒くても、少ないエネルギーで家の中を整えられる。

そういう家です。

雪国だから太陽光はダメ、という話でもないと思っています

ここでもう一つ、よく言われることがあります。

「新潟県長岡市みたいな雪国で、太陽光なんて無理でしょ」
という話です。

でも僕は、それも一度立ち止まって考えた方がいいと思っています。

たしかに雪国には雪国の難しさがあります。
でも、だからといって太陽光が全部ダメになるわけではありません。

実際に長岡市でも、雪国での太陽光発電の有効性を確認する実証実験が進められています。市内各所にパネルを設置して、雪の付着状況や発電量などのデータを取っています。さらに長岡市は、この知見をもとに施工能力を高める研修にも広げています。

しかも今は、住宅用太陽光の費用も昔ほど特別なものではありません。経済産業省の資料では、太陽光のシステム費用は近年低下傾向にあり、2024年に設置された10kW以上の平均値は22.6万円/kWでした。住宅の条件や容量で総額は変わりますが、以前より現実的な選択肢になっているのは確かです。

一方で、一般の家庭が年間40万円、50万円と光熱費を払い続ければ、10年で400万円、500万円になります。

そう考えると、太陽光は「元が取れない」と決めつけるより先に、
何と比べるのか をちゃんと考えた方がいいと思うんです。

もちろん、すべての家で同じ条件にはなりません。
屋根の向きも違うし、暮らし方も違うし、雪の影響も違います。
だから誰にでも同じ計算が成り立つわけではありません。

でも、少なくとも僕のところでは、
ちゃんと考えてつくれば、十分に元が取れるどころか、暮らしを守る力になる
ということを、実際のデータで示せています。

その考え方でつくった家の、10年後のデータがあります

今回お見せしたいのは、そういう考え方でつくった家の実際のデータです。

2014年、新築当初の1年間の電力収支はこうでした。

新築当初は、使う電気よりつくる電気の方が多くて、余剰電力で収入まで出ていました。

そして10年後の2024年です。

このマイナス8,670円というのは、買った電気代から売った電気代を引いた、年間の実質負担額 です。

つまり2024年、燃料価格が上がった時代でも、
この家の年間電気代の実質負担は8,670円だったということです。

月で割ると、約723円です。

これ、かなりすごいことなんです

これを見て、僕はやっぱりそうだよなと思いました。

家をつくる時に、10年後、20年後を見て、
災害や価格高騰や社会の変化に振り回されにくい家を考えておく。
その結果が、ちゃんと数字になって出ているからです。

もちろん、何が起きても絶対安心なんてことは言えません。
でも、影響を受けにくくすることはできる。
そこは、家づくりでかなり変わります。

石油が上がる。
電気代が上がる。
世の中が不安定になる。

そういう時に、毎月の請求書にびくびくする家より、
もともとの負担が小さい家の方が強いに決まっています。

本当に怖いのは、「高い」ことより「買えない」ことです

ここで、もう一つ大事なことがあります。

電気代が安いとか高いとか、どうしても値段の話になりやすいんですが、
本当に怖いのは、実はそこだけじゃないと思っています。

今の時代は、まだお金を出せば何とか買えることが多い。
でもこれから先、本当に怖いのは、お金があっても手に入りにくい時代です。

たとえば、
「すみません、お金はあります。だからガソリン1リッターください」
と言っても、そもそも物が足りなければ買えない。

日本はエネルギーを自分の国だけでまかなえる割合が高くありません。資源エネルギー庁の資料では、2023年度の日本のエネルギー自給率は15.3%で、G7で最も低い水準です。さらに発電は7割程度を化石燃料に依存しています。

だから僕は、家づくりでもそこを考えた方がいいと思っています。

ただ安い家をつくるんじゃない。
ただ節約できる家をつくるんじゃない。
世の中が不安定になっても、暮らしが揺れにくい家をつくる。

石油が上がっても、
電気代が上がっても、
資源が不安定になっても、
なるべく影響を小さくできる家。

それが、これからの家づくりで本当に大事なことだと思っています。

快適は、その場の気分じゃない

ここで大事なのは、これは単なる節約の話ではないということです。

僕がずっと大事にしている順番は同じです。

快適が先。
その先に健康がある。
その結果として省エネがある。

この順番です。

我慢して電気を使わない家じゃない。
暑いのに我慢する家でもない。
寒いのに厚着で耐える家でもない。

ちゃんと快適で、ちゃんと体にやさしくて、
その結果としてエネルギーの無駄が少なくなる。
だから、10年たっても20年たっても、暮らしを支えてくれる。

僕はそこが本物だと思っています。

数字は、考え方の答え合わせです

僕は、言葉だけで「すごい家です」と言いたいわけじゃありません。

本当に大事なのは、
10年後にどうなっていたか
です。

新築の時だけ調子のいい話は、いくらでもできます。
でも、10年後の数字はごまかせません。

今回の実績を見ると、
燃料価格が上がった2024年でも、年間電気代の実質負担は8,670円でした。

これは、たまたまじゃない。
家の性能、考え方、設計、空気の整え方、そういうもの全部の積み重ねです。

僕は、こういう家づくりをこれからもやっていきたいと思っています。

家は、今だけじゃない。
10年後、20年後を見てつくった方がいい。

そしてそれがピンとこないなら、
10年前、20年前を思い出してみてください。

その頃の当たり前は、今の当たり前とはもう違います。
だから、これから先の当たり前も、きっと変わります。

その変化の中でも、家族の暮らしがなるべく揺れない家。
僕は、そういう家こそ、本当に価値のある家だと思っています。

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